- 2025.08.25
【特集】美容サロン16件再生!全店舗売上UP! M&Aでつくる持続可能な組織運営とは?(後編)
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成功事例
株式会社チューンは、美容サロンのM&Aを軸に成長を続けている企業です。今回は、代表取締役・川原田敬介氏にインタビューを実施。美容師を志したきっかけから、M&Aに取り組むようになった理由、そして「9時18時勤務・年収500万円」を実現する持続可能な組織づくりの工夫まで、その歩みを伺いました。
M&Aに関心のある美容サロンオーナーはもちろん、従業員の働き方改革に取り組みたい方にも参考になる内容です。前編・後編の2回にわけて紹介します。まだの方はぜひ前編とあわせてお読みください。
プロフィール
株式会社チューン代表取締役社長 川原田 敬介
関東・中部・関西エリアにて、美容サロンを展開。16店舗をM&Aにより取得し、積極的な事業拡大を実現。従来の美容業界の常識にとらわれず、18時までの勤務で年収500万円を達成する社員もいるなど、持続可能な働き方を実現するため、労働環境の整備に注力している。
同じ月給30万円でも中身は同じじゃない
――買収した美容サロンの働き方を教えてください。
労働環境は完全に整備していますし、買収した店舗でもすぐに同じ体制を導入しています。
• 完全週休2日
• 勤務時間は9:00〜18:00(18:30までには退勤)
• 時短社員は9:30〜17:30や10:00〜18:00など選択制
• 掃除の時間なども含めて無理のないシフト管理
給与水準は高く、歩合でしっかり積み上げていけば、年収400〜500万円クラスのスタイリストも増えてきています。
美容サロンの求人「月30万円」って書いてある求人は多いですが、12時間労働だったり、休日が極端に少なかったりするケースが多い。ウチは一般企業と同様の労働時間で無理なく働いて、しっかり稼げる”環境を本気で実現しようとしているんです。
最初はしんどかったスタッフたちも、「ここならちゃんと頑張れる」と思ってくれて、一緒に前を向いてくれるようになりました。本当にありがたいことです。
買収した美容サロンを誰に任せるか
――買収した美容サロンの管理者が機能していない場合、どう対処しますか?
実際、よくあります。スタッフの声を聞いていると、「ああ、この方はそもそも管理者に向いてなかったんだな」と思うケースがあって。そういう場合は一度、管理職を降りてもらって、スタイリストとして現場に戻ってもらうことも多いです。
僕は、組織の中で本当に大切なのは「ルールを守って、みんなのことを考えられる人が管理者になること」だと思っているんです。オーナーさんって、確かにトッププレイヤーだったりするんです。でも、必ずしも管理者として優れているとは限らないんですよ。
チームで動くなら、ルールに沿って行動できる真面目な人のほうが、組織は円滑に回る。だから、そういう人に管理職を任せることが多いですね。うまくいかなければ降りてもらえばいい、という柔軟さも大切にしています。組織の健全性は「ポジションの入れ替えがちゃんと機能するかどうか」にかかっていると思っています。
降格の明確なルールがなかったときは、サボる人が出てきてしまって。でも、ここ2年で体制を見直し、ルールを明文化したことで、みんな本気になったんです。ちゃんと評価と報酬と罰のバランスを整えていくことが、組織の活力につながると感じています。
徹底的に見える化し、サボれない環境をつくる
――新しい店舗での組織づくりや育成について教えてください。
買収したサロンのスタッフも、中途採用の方も、すべて最初に研修担当の部長が直接研修します。会社のやり方、方針、考え方を最初にきちんと伝えてからスタートします。会社のことは僕が面談で直接伝えて、業務に関する部分は研修担当の部長が全て対応します。それが終わった後は、各店舗のメンバーでフォローアップしていく流れです。
買収後には基本的に僕は行かないんです。買収前には全スタッフと面談しますけど、買収後は極力「今までと変わらない環境」で進めるようにしています。現場には部長・課長・店長がいますし、マイクロマネジメントはしないと決めているので。業務分掌(ぶんしょう)もしっかり整えていて、誰が何をやるのか明確ですし、現場の問題は現場で解決する、というのが基本スタンスです。
みんな「しんどい経験」をしてきた人たちばかりなので、買収された側も、中途採用のスタッフも、環境が違うことややり方の違いを責めたりしない。だから、育ってきた背景の違いで揉めることってまずないんです。会社が決めていることだけはしっかり守る。それ以外は、「こうじゃなきゃダメ」という押しつけはしません。

――評価制度についても教えてください。
予約数や販売した商品数など、KPIを項目ごとに分けて、毎日・毎週・毎月で可視化しています。さらに、その数値に対して本人が「なぜできたのか・できなかったのか」を書くようにもしているんです。めっちゃアナログに“正の字”で記録をつけさせています。それを店舗ごとにグループLINEで毎日共有。毎月末になると、その「正の字」がずらーっと並ぶので、誰がどれだけ成果を出しているかが一目でわかるようになります。
ここまでやると、「何となく頑張ってます」が通用しないんです。見える化=サボれない環境というわけ。でも、だからこそ頑張っている人がちゃんと認められる仕組みにもなっています。
あえて遠い店舗のスタッフをつなげて、メンターになってもらうこともあります。利害関係が近すぎないからこそ、素直に、リアルにアドバイスできる関係性になっているのかなと。だから、買収後に孤立するスタッフがいないんですよ。みんなでフォローし合う土壌がちゃんとある。それが、ウチの一番の強みだと思っています。
ただ、評価もフレキシブルな会社なので、仕事をやらなかったり、できなかったりすれば、すぐに評価が下がります。逆に、チャレンジして、意欲があって、学び続けている人は必ず上がっていく。だから、本当に“頑張れる組織”なんですよ。
定着率は9割以上、買収した16店舗がすべて売上アップ
――厳しくしても、定着率は保てているんですか?
今、社員は約70名いますが、年間の離職者は2人程度です。買収を重ねて規模が大きくなってきても、ちゃんと整備された仕組みと、フェアな評価制度があれば、“厳しいけど辞めたくはならない”組織は作れると思っています。
――業界的には、まだまだ労働時間が長いイメージもあります。
そうなんです。だからこそ“9時18時”にこだわっている。導入したときは社内の反対がすごかったんですよ(笑)。でも、それこそ僕が思う“会社”の意義で、「働き方を変えるために存在している会社」なんです。結果として、時短勤務の方でも安定した生活ができるようになったし、育児と両立するママスタッフが正社員として月30〜40万円稼げるようになった。やって本当によかったと思っています。「働きやすさ」をちゃんと整えることで、仲間が残ってくれて、会社が育つ。これまで買収した16店舗、売上が下がったところは一つもないんです。
――これまでの買収の中で、特に印象的なエピソードはありますか?
あるサロンを引き継いだとき、スタッフ同士が挨拶もしないような空気で、「ここは無理です」と全員が口を揃えるような状態でした。周囲の誰もが「再生は無理」と言っていたんですが、僕は言ったんです。「やるのは俺や。リスクを取るのも俺や。だから本気でやってほしい」って。それにスタッフが応えてくれたんです。少しずつ空気が変わっていって、最初は不信感が漂っていたそのサロンのメンバーが、今では全員ウチの上のポジションにいます。当時パートで「商品なんて売れない」と言っていたスタッフが、今では会社を代表するトッププレイヤーになってるんですよ。
あれは僕がやったわけじゃなくて、スタッフ自身が動いたから変わったんです。でもこの事例があるからこそ、僕は「誰でも変われる。変えられる」って、胸を張って言えるようになったんですよ。
――最後に、これからの展望や想いをお聞かせください。
僕が最初からずっと変えたいと思っていたのは、美容業界そのもの。単にサロンを増やすことではなく、業界全体の働き方や在り方を変えることが目的なんです。どれだけ店舗を引き継いで、再生し、仕組み化し、スタッフの人生を豊かにできるか。それを繰り返していく中で、どこよりも高い給与を出せる会社をつくりたいし、働きやすい環境を整えたい。そして、ほぼ全員正社員で運営することにもこだわっていきます。
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