- 2025.07.14
【特集】美容サロン16件再生!全店舗売上UP! M&Aでつくる持続可能な組織運営とは?(前編)
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成功事例
株式会社チューンは、美容サロンのM&Aを軸に成長を続けている企業です。今回は、代表取締役・川原田敬介氏にインタビューを実施。美容師を志したきっかけから、M&Aに取り組むようになった理由、そして「9時18時勤務・年収500万円」を実現する持続可能な組織づくりの工夫まで、その歩みを伺いました。
M&Aに関心のある美容サロンオーナーはもちろん、従業員の働き方改革に取り組みたい方にも参考になる内容です。前編・後編の2回に分けてお届けします。
プロフィール
株式会社チューン代表取締役社長 川原田 敬介
関東・中部・関西エリアにて、美容サロンを展開。16店舗をM&Aにより取得し、積極的な事業拡大を実現。従来の美容業界の常識にとらわれず、18時までの勤務で年収500万円を達成する社員もいるなど、持続可能な働き方を実現するため、労働環境の整備に注力している。
美容師の働き方を変えたい!
――美容サロンオーナーになるまでの話を教えてください。
僕が美容師になったのは24歳のとき。実は医学部を目指して二浪したんですが、勉強していなかったんです……。「医師はあきらめて手に職をつけて生きていこう」と思い、美容の道に進むことに。「手に職をつけたい」「スーツを着て働くのが嫌」となると、美容師しか思い浮かばなかったんですよ。美容師になった後も、勤めたサロンで先輩とケンカして辞めたり、オーナーに叱られたり、ぶつかり合いながら仕事をしていましたね。ちなみに、スタイリストになって1年未満で独立しています。
――独立のきっかけは?
週休2日、社会保険完備の一般企業の働き方が当たり前だと思っていたのですが、美容業界に入ってみると、社会保険がなかったり、労働環境が整っていなかったり……。他の店の後輩からも相談を受けるようになり「ちゃんと働ける環境をつくろう」と思ったんです。1号店の場所は大阪の中津駅近く。20坪で坪単価は1万円くらい。ただ、「働き方を変えるぞ」っていう想いだけで始めたので、計画も何もなくて……。広告費を最大限に活用し、あらゆる媒体への出稿やチラシ配布を徹底しました。お客さんは広告でなんとか集まってくれて、ギリギリ回るように。借金を返しながら、とにかく必死でしたね。
――「働き方を変える」という理想は1号店で実現できたのでしょうか?
結局うまくはいかなかったですね。で、オープンから3年ほど経った33歳のとき、「もう一度チャレンジしたい」と思ったんです。スタッフの友達なども含めて良い人材が集まってきて、「もう一店舗出すぞ!」と。今の本店にあたる大阪・江坂の店舗を立ち上げました。

「頑張ったらなんとかなるやろ!」という気持ちだけはあったんですが、結果的にはみんな疲弊してしまって。スタッフの半分が辞めてしまったんです。仕方なく1号店の中津の店舗を売却し、江坂に一本化。正直なところ、1号店の売却がなければ自己破産していたかもしれません。M&Aを意識したのはそれがきっかけでした。
「M&Aで拡大なんて無理だよ、君には」
――そこから、M&Aという新たなステージに向かうわけですね。
40歳手前には、当時の2店舗目の借金も完済して、借り入れも再びできる状態になりました。収益も回復して、働き方も少しマシになってきた。じゃあ「次、ウチの会社が何をするのか?」と考えたとき、「美容業界の働き方を新しくつくる」っていう原点に戻ったんです。でもそれは箱と人がいないとできない。美容サロンって全国で26万件以上あって、毎年たくさんの新しいお店ができて、毎年たくさん潰れている。人口はどんどん減っていくのに、現場の美容師さんたちはどんどん独立して、やがてその多くが失敗してしまう。それなら、自分が買い取らせてもらって、再生して、働く人がハッピーになれる場所にすればいい。そういう想いが今の原動力になっています。
――M&Aを通じた店舗展開は難易度が高いですよね。
そうですね。実際「無理だよ、君には」と、いろんな人に言われました。でも逆に、「これができるようになったら、みんなができないことができるってことやん」って思って。誰でもできる拡大戦略ではなく、再現性が低くても“自分にしかできないやり方”を見つければ、負けにくくなるんじゃないかと。これはある意味、僕が「やるべきことなんじゃないか」という確信もありました。
――具体的にどんなルートからM&A案件が入ってきているのでしょうか?
BGパートナーズと、ディーラーさんからのご紹介が中心ですね。「このオーナーさん、辞めるみたいです」「事業承継で困ってるそうです」といった情報が入ってきて、こちらから相談に乗らせていただく流れです。ウチのように、しっかり買って、再生して、ちゃんと業績を上げている会社って他にあまりないみたいで、次第に応援してくれる人が増えてきて。M&Aに関わる企業にも、「こういう会社があるよ」と紹介してくれる人が出てきて、案件も増えてきています。
愛知の山奥の物件も、立て直すことができた
――案件の選び方を教えてください。
基本的にはどこでも買収の可能性があります。よく「ここは立地がいいから出店しよう」みたいな話があるじゃないですか? でも僕は、そういう発想をもともと持っていなくて。今の本店も「こんな場所に人なんて来ないでしょ」って言われました。でも、今はウェブの時代。ちゃんとネット上で発信すれば、看板がなくても来てもらえるんです。
特に買収の場合って、すでにその場所にお客さんが一定数通っているわけですよね。その上で、広告・集客の仕組みを入れて、さらに新規を呼べばいいだけ。美容サロンは生活に欠かせないインフラだから、人口がある程度いる場所なら、どこでも成立するビジネスなんですよ。
たとえば、愛知県の豊田市の店舗は、かなり山の中だったので、初めて行った時は「うわ、こんなところにあるの!?」ってびっくりしました。でも、オーナーさんは高齢で引退を考えていて、「若いスタッフ2人がいるから、面倒見てほしい」と。そこでスタッフと面談して、「本気でやるなら、全部チャレンジするよ」って伝えたら、「やります」と言ってくれたんです。そうやって本気出すって言われたら、進めなあかんって考えるタイプなんですよね。「でもこれ、会社の財務ヤバくなるんちゃうか……」っていう不安もあったんですけど、思っていた以上にうまくいった。正直、期待していなかった分、びっくりしました。
買収判断のカギは「前オーナーの人柄」
――とはいえ、すべての案件を買っているわけではないですよね。
10件面談して、実際に買うのは1件あるかどうか。買えない案件のほうが圧倒的に多いです。判断基準は、オーナーさんの人柄や姿勢ですね。スタッフのことを本当に考えているかどうか。正直、自分の利益だけを考えて売却しようとしている方が8~9割です。売上も利益も大したことがないのに、「この金額で売って、好きなことをやりたいんです」っていうパターン、すごく多い。スタッフより自己都合を優先する姿勢では、買収後の成功は見込めません。スタッフが残らないし、お客さんも離れる。だから、そういう場合は「買えないな」と思ってしまいます。
――価格の算出はどのように行っているのでしょうか?
損益計算書(P/L)をベースに判断しています。バランスシート(B/S)で「資産がいくら残っているか」という評価もありますが、美容サロンの売却って、たいてい居抜きじゃないですか。そこに資産価値はあまりないと思っていて。価値があるのは「人」と「顧客」かなと。僕が評価しているのは、スタッフがどれだけ長く勤めているか、どれだけ思いを持って働いてきたか、そしてそのスタッフが支えてきた既存のお客さまとの関係性です。売上構成や利益率を見ながら、その中でどう価値が生まれているのかを見極めて「この事業なら自分たちで再構築できる」と判断した場合のみ買収しています。
BGパートナーズは手数料が安く、価格も妥当
――買収価格の妥当性はどう判断しますか?
正直、BGパートナーズ以外の仲介業者さんが出してくる案件って、だいたい価格設定が高すぎるんです。多くは営業利益の3〜5倍で提示されてきますが、そういう案件は基本的に買いません。できるだけ高く売ることで仲介手数料を多く得たい気持ちはわかります。でも、一度断った案件について、数年後に「あの案件、どうなってますか?」と聞いても、ほとんど売れてないんですよ。結局、「誰も買ってない=市場がNOと言っている」ということですよね。
それに対してBGパートナーズの場合は、まず仲介手数料がリーズナブル。価格も一番妥当だと思います。案件資料もしっかりしてますし、やっぱり美容サロンに特化している仲介会社なので、そこが大きいですね。
――買収時の契約や、引き継ぎの際に意識していることはありますか?
まず、契約書は徹底的にリスクがないように作り込んでいます。弊社ではM&Aに特化した弁護士に依頼し、法的にも経営的にも万全な契約書を用意しています。多くの美容サロンでは、売却や譲渡の経験があっても、契約書をきっちり作っていないことが多いんです。でも僕らは、契約段階でお互いにリスクを明確にし合って、フェアな関係でスタートすることを徹底しています。
そして、スタッフにどれだけ熱意を持って関われるか、それに尽きます。買収された側のスタッフにとって「この会社で働いてよかった」と思ってもらえるかどうかがすべてです。自分が働いているお店が買収されて嬉しい人なんて、基本的にいません。だからこそ、「どれだけマイナスをプラスに変えられるか」という気持ちで、僕らが熱意を持って現場に入り込んでいく。やっぱり、それしかないんですよ。
美容サロン事業の売却・買収について
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