2023.08.31

M&A後に起こりうる “意外な” 金銭トラブルに関する解説

  • 売りたい方
  • 買いたい方
M&A豆知識

特に小規模な美容サロンのM&Aを行う場合においては、売り手に紐づく債務(借入や未払い等)を引き継がない “事業譲渡スキーム” を選択する場合が大半を占めます。

それでも意外な相手先からの金銭請求や、当事者間での金銭トラブルなどが発生する事例が存在します。
売り手と買い手の間における認識の違いに起因するケースもあれば、取引先との事前確認不足によるケース、最悪は事件性のあるケースもあり、いずれにしてもそのような事態とならないように万全の準備と注意を払う必要があります。

この記事では、美容サロンM&A時に起こりがちな “意外な” 金銭に関連するトラブルと、それを未然に防ぐための手段に関してわかりやすく解説いたします。

なお、この記事は事業譲渡スキームを前提とした概要説明に留めております点をご留意ください。

 

当事者間で起こりうる “意外な” 金銭トラブル

今回本項で採り上げるのは “ペイメント” に関するトラブルです。

会計時の支払い手段として一般的となっている「クレジットカード」や「〇〇ペイ」などの決済方法ですが、主に決済代行会社より貸与された決済端末をレジに設置しそれを利用することでお客様が各種ペイメントをご利用いただけます。

美容サロンにおけるペイメントの利用率は一般的に過半数を超えており、無くてはならないサービスと言えます。

但し、この決済端末を設置するには事前の申し込みと契約、決済端末の受領までに一定の時間が掛かるため、M&Aの完了後にすぐ新店舗としてオープンさせようと思うと「現在クレジットカードの利用ができないので現金のみのお会計となります」というアナウンスが必要になってしまいます。

そこでM&A当事者間で行いがちな行動が「決済端末の新規設置までの期間、元々の店舗で契約している決済端末を使用する」という手段であり、トラブルの原因です。

お客様が利用した各種ペイメントの売上は、決済代行会社とペイメント毎に設定された手数料を差し引きした上で契約者の指定口座に振り込まれます。すなわち、買い手オーナーの売上金が、売り手オーナーの口座に振り込まれます。

買い手オーナーが「ペイメントを使えずに困っているから」という善意で自分名義の決済端末を一時的に貸したとしても、返金時に「金額が合わない」「手数料が高すぎる」と主張され揉め事となるリスクがあります。
売り手オーナーに「使わせてください」とお願いしたところ二つ返事でご了承を頂き、感謝していたら「旧オーナーが音信不通になって返金されない」という事態になる。ということも実際に起きています。

そもそも別名義の決済端末を利用すること自体に契約上の問題がありますが、これは現実問題としてありがちなケースですので、くれぐれもこのようなトラブルが生まれないように留意しましょう。

 

取引先との間に起こりうる “意外な” 金銭トラブル

“事業譲渡スキーム” の場合、原則として取引先との各種契約においては
・買い手は取引契約の解約
・売り手は取引契約の新規契約
という段取りを組みます。

但し、時に売り手から買い手に対する譲渡条件の中で「〇〇の契約は承継して欲しい」というケースがあります。これは売り手が高額な什器や継続利用する必要のあるサービスのレンタル/リース契約をしている場合に多く見られます。
理由としては「途中解約時の違約金発生」を防ぐためであることが大半で、レンタル/リース会社も同意の上で契約の名義変更を行うため、その行為自体には問題はありません。

ではここで、トラブル原因となった事例として採り上げるのは「レンタル品の契約を承継した際に、売り手オーナーの未払金を請求された」というケースです。

原則として、新規契約の場合は前借主とは契約上一切の関係性がないためこのような請求は認められません。
但し、承継を前提とした契約書の中に「前借主の負債も承継する」旨の一文が含まれていた場合は係争案件となり得ます。

このトラブルを防ぐためには契約書をしっかりと読み込むことは当然として、M&Aの最終契約書の「表明保証」において、引き継ぎを要する契約に関して売り手の未払い等が無いことを表明して頂くことが重要です。

 

テナントオーナーとの間に起こりうる “意外な” 金銭トラブル

続いて、M&A直後にはあまり生じることのないトラブルですが、万が一に退去する際に大きなトラブルとなり得る事例です。

事業譲渡や居抜き(造作資産譲渡)を行う場合にはテナントオーナーと買い手の間で新規に賃貸借契約を結びますが、売り手が改装した内装を、買い手が退去する際には撤去する義務(原状回復義務)が新たに設定されるため、新規契約ではあるものの売り手オーナーの義務の一部を承継することになるとも言えます。

ではここで、トラブル原因となった事例は、店舗賃貸借契約の原状回復の範囲や内容が「想像を超えていた」というトラブルです。
原状回復義務を分かりやすく表現すると「退去時に、入居時と同じ状態に戻してテナントオーナーに返却する義務」です。
事業譲渡や居抜き(造作資産譲渡)を行う場合に売り手がどのような「入居時の状態」で入居したかわからず、その状態に戻すためにどの程度の工事が必要なのか見当がつかないため、小さなサロンで「マンションの退去時のように壁紙を変えなければいけないのかな?」と思っていたら、500万円を請求された。ということが起こり得るということです。

新築ビルの入居時に多いのは「スケルトン返し」という表現で、分かりやすく表現すると「室内がコンクリート剥き出しで何にもない状態で返却する」という意味です。
エアコンもトイレも壁も床も全て解体して廃棄する必要があるため、相応の費用が発生します。

極端な例となると「吹き抜けだと思っていたら2フロアの床を壊して吹き抜けにしたので床を再度作らなければならない」という事例もありますが、全てが全て高額になるという意味ではありません。

ここでお伝えしたいのは「原状回復義務がある場合、どの状態まで戻す必要があるのかを不動産会社に確認してから契約をしましょう」ということです。

サロンM&Aネットのフルサポートプランをご利用の場合は専任コンサルタントがこれらトラブルの防止に向けて支援をしておりますが、セルフプランをご利用の場合もご不安な点がある場合はサロンM&Aネット事務局までお気軽にご相談ください。

 

さいごに

サロンM&Aネットは、美容サロン事業を営む皆様の事業承継に関するお悩みを全力でサポートいたします。

M&Aは初めてだから不安だ」という気持ちは当たり前のことです。

私達は美容サロン事業に特化したM&A仲介事業者として、15年以上に渡る豊富なサポート経験がございます。

M&Aに限らず、出店や閉店に関するお悩みやお困りごとがございましたら、無料相談を受け付けておりますので、お電話やお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

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