- 2023.07.31
M&A後の出店トラブル防止に重要な “競業避止義務” に関する解説
- 売りたい方
- 買いたい方
美容サロンのM&Aが完了した後、同じ町に売り手が同業態のサロンを出店したことによって売上が激減した。
「ありえない!」と言いたい話ですが、あり得る話です。
ヘアサロンを売却した後にアイラッシュサロンを開店したら、売り手から訴訟を起こされた。あり得る話です。
この記事では、美容サロンM&A後の出店トラブルを未然に防ぐために重要な “競業避止義務” に関してわかりやすく解説いたします。
なお、この記事は事業譲渡スキームを前提とした概要説明に留めております点をご留意ください。
競業避止義務とは
美容サロンM&Aにおける競業避止義務とは、M&Aによって美容サロン事業を売却した売り手が、売却した事業(や会社・サロン)に対して競業行為を行い、事業を買収した買い手に対する損失を生むことを未然に防止するために売り手が負う義務のことです。
例えば、SalonAというヘアサロンを買い手が買収した後、近隣にSalonBというヘアサロンを売り手が開店すれば、買い手のSalonAの業績が悪化することは容易に想像されます。
このような行為を「競業行為」といい、M&Aにおいて売り手に対してそれを禁止することを「競業避止義務」といいます。
「義務」というのは、会社法上においても事業譲渡の場合に売り手は競業禁止義務を負うことが明記されているためです。
なお、個人事業主の場合も商法による規制で同様の決まりがあり、株式譲渡の場合においても一般的には最終契約書に盛り込まれるため、この「競業避止義務」に関しては売り手も買い手も認識しておく必要があります。
美容サロンM&A時の一般的な内容
美容サロンM&A時において、主に規定する項目は
・業種
・地域
・期間
となります。
まず業種に関してですが、ヘアカットのみを提供する事業を売却した売り手に対して、一切の美容サロン事業(例えばエステ・ネイルサロンの出店)を禁じることは、同じ美容サロンという枠組みだとしても競合する事業とは認められないでしょう。
よって、明確に競合(顧客の奪い合いとなり売り手が売却した事業に対する負の影響)する事業であることを禁じることになります。
地域に関しては「売却した事業拠点の同一区域内および隣接する区域」が一般的となり、同一都道府県などの設定は譲渡した事業所の規模(サロン数)が多い場合を除いては設定されるケースは稀だといえます。
期間に関しては、一般的には2~5年程度で設定されるケースが多数を占めます。
なお、期間設定が最終契約書に「明記されていないからといって免除されるわけではない」ことが注意点です。前述の各種法令等において事業譲渡の場合20年が原則として規定されており、条文に無い場合はそれが適用されると認識しておきましょう。
よって競業避止義務を免除する場合(特に売り手)は、その旨を最終契約書に明記するようにすることが重要です。
具体的な取り決めが重要
この「競業避止義務」の内容に関しては、前述のように法令等における原則はあるものの最終契約書の条文によって任意で定めることができます。
買い手としては厳しい制約を課すことで買収した事業の安全性を担保することが出来ますが、売り手の立場としては自己の今後のビジネスを考えるうえで制約が少ないことを望むでしょう。
この競業避止義務において、売り手と買い手の双方にとって合理的な着地点を見つけなければM&A自体が成立しないため、しっかりとした協議を進めることが大切です。
また、売り手が事業を売却した後も、自身の生活のために慣れ親しんだ美容事業を行うことを禁じるのは「職業選択の自由」という観点で認められないこともあります。
何よりも最終合意書によって定められた競業避止義務の各項目の記載内容・表現が曖昧だと、お互いの「文章の解釈」によって係争となり得るため、出来るだけ明確な表現を用いることも心掛けましょう。
さいごに
サロンM&Aネットは、美容サロン事業を営む皆様の事業承継に関するお悩みを全力でサポートいたします。
「M&Aは初めてだから不安だ」という気持ちは当たり前のことです。
私達は美容サロン事業に特化したM&A仲介事業者として、15年以上に渡る豊富なサポート経験がございます。
M&Aに限らず、出店や閉店に関するお悩みやお困りごとがございましたら、無料相談を受け付けておりますので、お電話やお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。
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